職業会計人は、日本では公認会計士と税理士のこととされている。このところ、新聞等で東芝の粉飾決算に関する公認会計士監査の問題や国税庁OB税理士による巨額脱税指南等が話題になっている。公認会計士の使命は、企業の決算を監査し、企業がその財政状態、経営成績等を正しく利害関係者に報告することを担保することである。また、税理士は納税者が正しく納税することを担保することを使命としている。使命が何であるかは、その職業に就くときは、明確に分かっていたはずだと思うが、長い間業務に従事しているうちに、徐々に薄れて行く危険性が誰しもある。常に原点に立ち返る必要がある。
東芝、オリンパス、かつては、カネボウ等、粉飾決算はあとを絶たない。肝心なのは、その時、それを防止するのを唯一の使命とする監査法人(公認会計士が集まった組織)が、その使命を発揮できなかったことである。長期間、業務に従事したことによるなれ合いが大きく原因しているものと思われる。また、東芝のような名門企業のやることに対して、口を出しづらかったこともあるかも知れない。
法人税法違反容疑で、東京地検特捜部は脱税指南をした国税庁OB税理士と記帳会社役員を11月に逮捕した。システム開発会社の法人税を軽減するため、架空の外注費を計上するなどの方法で法人所得11億5400万円を隠し、法人税3億4500万円を脱税したとされている。会社の節税を考えていて脱税を考えてしまったのだろうか。冷静に振り返らないと危険な罠にはまることになる。
職業会計人は、職業専門家として、社会から信頼される存在でなくてはならない。職業専門家は、常に精神的独立性を保ち、私利私欲に走ることなく、業務を遂行する必要がある。
それにしても、東芝の監査を担当している新日本監査法人に現在も監査を依頼している会社は、今後も新日本監査法人に監査を依頼すれば、株主総会でなぜ新日本監査法人を再任したのかの理由を質問され、大変難しい状況に置かれる可能性がある。通常の取引と異なり、長年付き合いがあり、良く分かっているからというのは、監査に関してはなれ合いというマイナス要素が大きく、再任の理由にはならないからだ。