一般社団法人には持分の概念がないことを利用した相続税対策が話題になっております。株式会社等には持分があるため、その株式会社に不動産や株式等の財産を贈与・譲渡すると贈与・譲渡した不動産や株式等は将来、相続税の対象となることはありません。しかし、この株式会社の持分には、その不動産や株式等の財産価値が反映され、株式が財産として未来永劫、相続税の対象となります。
一方、一般社団法人には持分の概念がないため、個人が所有する不動産や株式等を一般社団法人に贈与・譲渡すれば、このときの税金だけで、それ以降、未来永劫相続税の対象となることはないと言い切ることはできるのでしょう。問題がないとは言い切れません。
考えられるリスクは以下の通りです。
1 現行法でも課税対象とされるリスク
公益社団法人や非営利徹底型の一般社団法人では、解散時の残余財産は国や地方公共団体に帰属することとされていますが、これ以外の一般社団法人では、残余財産の分配は社員総会で決めることができ、これに財産性を認めて課税することも全く不可能とは言い切れません。
2 将来の税制改正によるリスク
また、このような事例が多発し、一般社団法人化した人とそうでない人との間の相続税課税における不公平感が高まれば、当局が税制を改正し、何らかの課税が行われることも考えられます。
3 相続争い、財産管理のリスク
持分がないため、一般社団法人の社員の間でもめ事が起きたときなど、解決方法は話し合いのみとなり、法定相続割合もないため争いの決着に時間がかかることが予想されます。また、乗っ取り等のリスクも持分がない故に大きいとも言えます。