相続税の申告書を提出してから、1年以上経った後に税務調査が行われることが多い。税務調査は、通常、被相続人(以下、ここでは被相続人を「父親」とする。)の自宅に税務署の職員が10時ころ訪問し、4時ころまで行われる。場合によっては、1日で済まないこともある。訪問すると、税務署の職員から父親(被相続人)に関する質問がある。父親の生い立ち、趣味、生活ぶり等質問は父親の財産形成の外堀から行われる。美術品の収集が趣味であれば、それらが、相続財産として正しく計上されているか等が問題となる。
父親の生活していた部屋を見ることや通帳の保管場所等も見られることが多い。これらから、財産の状況を推察するのであろう。
この場では、預金の実質的な所有者が誰であるかが問題となることが多い。子どもの名義の預金だが、子どもはその存在すら知らず、専ら母親がその預金の出し入れを行っていることがよくある。なかには、通帳の印鑑も母親のものと同一ということもある。この場合には、この預金は子どものものとは言い難く、その預金はその資金原資を拠出した人のものとされる。資金の拠出者が父親であれば、それは被相続人である父親の相続財産となる。
あくまで子どもの預金であり、父親のものではないと主張できるのは次のような場合である。
① 子どもが通帳を保管・管理し、自分の裁量で出し入れしている。
② 預金を贈与した証拠書類を整えておく(贈与証書の作成、贈与税の申告など)。
③ 幼少の子どもの通帳を親が管理している場合には、印鑑は別にし、ある程度の年齢になったら、子どもにその管理を任せる。
なお、子どもや妻に贈与した預金でたとえ贈与税申告をしていても、父親がなくなる前3年以内に贈与されたものは、その贈与はなかったものとされ相続財産として相続税の計算が行われることとなる。
平成27年より相続税の改正が予定されており、課税対象者はいままでの2倍以上となることが予想されている。計画的な対策で節税を考える必要性がますます高まっている。