何か考えるとき、どうしても近視眼的になりがちなことはよくある。目の前の些細なことに目を奪われ、大局的な判断ができなくなることは人間社会の中ではよくあることである。あることを判断する際には、この判断で本当にいいのか、もう一度冷静に振り返ることが重要である。
先日(1月14日)、中日新聞の朝刊に「消費増税 浜松市も悩まし」と題する記事が掲載されていた。2011年に浜松医療センターの運営形態を変えたところ消費税の課税対象がふえてしまったという内容である。確かにこれは事実であり、何の反論の余地もない。しかしながら、これを読むと、運営形態の変更は失敗だったとの感想を抱いてしまう人も少なからずいるのではないかと思う。このため、当時浜松医療センターがどういう状態であったか、何のために運営体制を変更したのか、運営体制を変更したことにより医療センターはどういう状態になったのかといった分析が必要と思われる。
当時、医療センターの財務状況は、行革審等でも取り上げられ、新聞等でもたびたび掲載され覚えている方も多いとは思うが、退職金債務を考慮すれば、数十億円の債務超過の状況であった。つまり、毎年1億円を超える赤字を垂れ流していたのである。万年赤字状態からの脱却のため様々な議論を経て、「浜松市の丸抱え方式」からの脱却が必要との結論に至り、独立性の強い「利用料金制」に変更した経緯がある。この中で、医療センターにおいても、理事長・院長以下必死の経費削減を実施し、また、診療報酬の改訂による収入増という追い風もあり、数億円の黒字経営に転換できたのである。これはひとえに、浜松市からの独立性が高まったことによる理事長以下経営陣の責任感の増大、組織の危機感の増大によるところが大きい。
医療センターが数千万円の消費税負担増をはるかに上回る利益を出せる体質になったことによる市の財政への貢献は大きなものがある。その一部が消費税負担となったとしても、消費税は国民のために使われるものであり、結果的に医療センターは、浜松市民にも国民にも大きく貢献しているのである。運営体制の変更を契機に医療センターは大きく変貌を遂げ、市民のお荷物から完全に脱却することができたのであり、何ら問題はなかったという市民が数多くいることを願うばかりである。
2014年02月06日