芸能人の個人事務所(会社組織)が税務申告を行っていなかったと連日テレビ、新聞を賑わせている。ただ本人だけが所属する個人事務所だが、会社組織となっているようだ。これには税金の節税という目的があると推測される。なぜ、会社組織にすると節税になるのか、それには税金の計算構造が影響している。
会社には会社の儲けによって「法人税」が課税される。会社は定款(会社の根本規則)によって、決算期を定めなければならない。通常、年一回 特定月を定め、決算期末から2ヶ月以内に決算書・法人税申告書を作成し、税務署に提出することとなる。
一方、個人事業者は1月1日から12月31日までの所得に対して、「所得税」が課税され、3月15日までに所得税の確定申告書をを税務署に提出することが義務付けられている。
法人にするメリットとしては、会社からもらう給与にかかる税金計算上、給与所得控除が最大195万円あるため、その分節税できる。また最高税率は30%であり、個人の所得税の最高税率45%と比べると低くなっている。これはあくまでも国に納税する税金(国税)だけのことであり、これ以外に地方税(都道府県民税、市町村民税)が課せられるので単純な話ではないが、高額の所得が有る者は概して法人の方が税金負担は低くなる傾向にある。また、法人にしたほうが飲食にかかる費用などを経費処理しやすいといったこともメリットと言われることが多い。ただし、法人税申告書、会社の決算書作成は個人事業者のそれより煩雑であり、作成を税理士に依頼した時の報酬は高くなるほか、さまざまな規制(社会保険に強制加入、法務局への登記事務など)があることもデメリットに挙げられる。
税金のことだけにとらわれることなく、自分の事業をどうしたいかといったことにより、個人事業者の道を歩むか、法人組織で事業展開するかを選ぶ必要がある。
2019年10月29日
法人設立の税務上のメリット・デメリット
芸能人個人事務所の脱税事件を思う