「会社は誰のもの?」と聞かれたとき、昭和の時代は、多分、「会社は従業員のもの」と答えた人が圧倒的に多数だったと思う。その当時、日本の超有名企業の経営者でも、大卒初任給の10から15倍くらいの報酬であった。そのうえ、所得税は累進税率が激しく、なおかつ最高税率は所得税75%、市県民税13%と大変な高税率であった。日本社会は戦後「欧米に追い付け追い越せ。」とばかりに国民全体が勤勉性を発揮した結果、先進国の仲間入りを果たし、高度成長を謳歌していた。日本の世の中全体に一億総中流といわれた平等(不平等?)な社会を実現していた。
平成になって、バブル経済の崩壊、リーマンショックを経験し、今現在、すっかり「会社は株主のもの」といった様相を呈してきている。生産・消費の拠点は東南アジアに移り、日本の会社も生産拠点を低賃金の東南アジアに移転し、日本での生産は極端に減っている。国内では、供給過剰体制のもと価格下落が止まらず、賃金水準もそれに対応するため、非正規社員を増加させることで抑えられてきている。先進国中心に回ってきていた経済は、発展途上国を巻き込んだグローバルなものへと変遷してきた。会社もグローバル標準というべき、高額報酬の経営者が増加し、今や初任給の100倍を超える報酬の経営者も珍しくない。株主に経営を委託された経営者は短期の利益獲得に走り、高額配当を実現する見返りに自身も高額報酬を得るという欧米企業並みになった。
この結果、以前と比べ貧富の格差は拡大し、日本の社会問題化しつつある。学費の無料化等、欧米並みの早急な福祉対策が必要となりそうである。しかしながら、そこには財政再建、少子高齢化、人口減少といった大きな問題が立ちはだかる。