近年注目を集めていたAIスタートアップ「株式会社オルツ(証券コード260A)」が、証券取引等監視委員会(SESC)の調査対象となっていることが明らかになりました。同社は「パーソナルAI」や音声認識議事録ツール「AI GIJIROKU」などで成長を遂げてきた一方、2025年4月に売上の過大計上の疑いが報じられ、株価が急落しています。
問題の概要
- 第三者委員会の設置:売上高の計上に関し、信頼性が疑われる取引が複数確認されたとして、社内に調査委員会が設置されました。
- 会計処理の疑義:請求書の根拠となる取引の実態や、入金の有無、契約書類の整合性などに問題があるとの指摘があります。
会計士の視点から見る本件の問題点
① 売上の認識に関する内部統制の脆弱性
オルツ社の売上高の9割を占める議事録作成サービス「AI GIJIROKU」について架空売上が存在するという内部告発もあり、取引の実在性が確認できず、契約書・検収書・入金確認といったエビデンスが曖昧なまま売上を計上していた可能性があります。
② 監査法人との関係
報道によれば、同社と監査法人の関係にも懸念が持たれています。監査人の独立性や適切な監査手続きの実施がなされていたかについても問われる局面となっています。
③ 業界全体への影響
AI業界は技術革新が先行し、ベンチャーキャピタルなどからの出資を前提に急成長を目指す企業が多く存在します。今回の問題により、
- AIスタートアップ全体への不信感
- 幹事証券会社による審査の厳格化
- 監査法人による会計監査の厳格化
などの波及が懸念されます。
オルツ社の問題は、単なる一社の不祥事にとどまらず、成長分野であるAI業界全体の信頼性に関わる重大な問題です。企業は「成長ストーリー」だけではなく、地に足のついた会計とガバナンスの整備が求められます。
まずは、第三者委員会の調査結果報告を待ちたいと思います。
水野隆啓
浜松市/会計事務所/税理士/公認会計士/オルツ/AI
- Posted by 2025年04月30日 (水) |
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