中小企業の自社株承継を後押しする法人版事業承継税制(特例)は、贈与・相続時の100%納税猶予など強力な措置が認められる一方、適用の“時間軸”が厳格です。具体的には、2026年3月31日までに特例承継計画の申請、2027年12月31日までに承継の実行が必要と整理されています。計画後の定期報告等の事務も含め、運用は「期限管理」が肝となります。
2025年度(令和7年度)税制改正では、役員就任要件等の見直し(緩和)が示されました。具体的には、後継者の役員就任期間や事業従事要件など、運用上ネックになりやすい条項の負担を下げる方向で整理されています。一方で、特例措置の適用期限(制度そのものの延長)を今後さらに延ばすことは想定していない旨が示されています。
スケジュール再確認(重要期限)
・特例承継計画の申請:2026年3月31日まで
・承継(贈与・相続)の実行:2027年12月31日まで
・事後の定期報告等:都道府県・税務署への報告(一部宥恕規定あり)
特例の適用企業は、承継後5~10年の運用期間にわたり、事業継続・役員体制・雇用確保等の要件充足を継続的に確認し、計画→実行→報告の一連のプロセスをロードマップ化して運用する必要があります。
また、特例対象株式に係る相続税額は猶予される一方、その他の財産に係る相続税額は猶予されません。さらに、相続税の計算過程では、特例前提であっても課税価格の全体像に応じて他の財産分の相続税負担が増加する可能性があります。
このため、株式を承継しない推定相続人を含む関係者全員が制度の趣旨・効果・リスクを正確に理解し、遺産分割方針・納税資金計画・遺留分対応まで見据えた合意形成を図ることが肝要です。
水野隆啓
浜松市/会計事務所/税理士/公認会計士/事業承継税制/特例承継計画
- Posted by 2025年09月26日 (金) |
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