法務省の法制審議会で、会社法改正の一項目「大企業への社外取締役の起用義務づけ」が見送られました。
社外取締役の設置義務は、会社にとってしがらみのない外部の人材を登用し、経営をチェックさせることが狙いですが、巨額の損失を隠していたオリンパスのように、社外取締役を選任していても不祥事を防げなかったケースもありますし、一般に、社外取締役の設置は「経営の自由度を封じられ、かつコスト増につながる」との経済界からの反発が強く、現在も、上場企業の半分程度しか導入されていません。
社外取締役は、他企業トップの経験者、弁護士、大学教授等の専門家が就任するケースが多く、金銭的に経営者から独立した存在であるため、経営者が『自身ではなく株主にとって望ましい経営を行っているか』を監視する役割が期待されていますが、この社外取締役について興味深い論文を見つけましたのでご紹介します。
「社外取締役はなぜ普及しないのか?」京都産業大学准教授 齋藤 卓爾
http://www.rieti.go.jp/jp/projects/cgp/16.html
(要約すると…)
・過去10年、日本において社外取締役を導入した会社の特徴は、「R&Dへの投資量が多い企業」「株価の分散が大きい企業」「フリーキャッシュフローの少ない企業」だった。
・一般に、社外取締役の導入が効果的と考えられるのは、外部からの監視が容易で、経営者による資源浪費の可能性が高い企業なので、この結果は極めて衝撃的。(事実、米国では、「R&Dへの投資量が低い」「株価の分散が小さい」「フリーキャッシュフローの多い企業」ほど社外取締役を任命しており、真逆の結果を示している)。
・しかしながら、社外取締役を導入した会社は、そうでない同業他社に比べ、導入後の利益及び株価が有意に改善し、結果的に株主価値に貢献している。
社外取締役の設置はコスト&ベネフィットの比較衡量で考えられるべきですが、経営に“外部の目が入る”等、緊張感をもたらす仕組みづくりがどんな会社においても欠かせないことは言うまでもないことなのでしょう。
監査課 石巻
浜松 公認会計士 税理士 会計事務所 税理士事務所 浜松市 会計監査
- Posted by 2012年08月20日 (月) |
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