非上場会社の株式については取引市場がなくその価値を意識する機会はあまりありません。しかし、後継者への贈与や相続が発生すると、自社株にも評価額をつける必要があります。
現在の代表的な評価方法には、「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」があります。類似業種比準方式は、同業種の上場会社の株価を参考に、「配当」「利益」「純資産」を比較して評価する方法です。一方、純資産価額方式は、会社が保有する資産・負債を相続税評価額に置き換えて会社の価値を計算します。
ここで事業承継特有の問題が生じます。会社が利益を積み重ねれば純資産が増え、業績が良くなれば利益も増えます。つまり、経営者が会社を成長させてきた結果、自社株の評価額が上昇し、次世代へ株式を渡す際の相続税や贈与税の負担が大きくなることがあります。
一方、現在の評価方法には「評価額が低くなりすぎているのではないか」という反対方向の問題も指摘されています。会計検査院の調査では、純資産価額に対する実際の申告評価額の中央値が、大会社で0.32倍、中会社で0.50倍、小会社で0.61倍となっており、規模の大きな会社ほど相対的に低い評価となる傾向が確認されました。
こうした指摘を受け、国税庁は2026年4月に「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を設置し、現在まさに評価方法の見直しを議論しています。そこで注目されているのが「残余利益方式」です。考え方を簡単に表すと、「会社の簿価純資産+会社が通常期待される水準を超えて稼ぐ利益」によって会社の価値を評価する方法です。例えば、簿価純資産が1億円の会社で、期待される収益率を8%とすれば、1億円×8%=800万円が通常期待される利益となります。この会社が毎年1,200万円の利益を稼ぐのであれば、1,200万円-800万円=400万円が「残余利益」です。この400万円を将来にわたってどの程度生み出せるのかを一定の方法で現在価値に換算し、もともとの簿価純資産1億円に加えて企業価値を算定する、というイメージです。
2026年の有識者会議では、会社規模によって評価方式を変える現在の仕組みを見直し、残余利益方式を取り入れる方向で具体的な検討が進められています。実現すれば、長年使われてきた非上場株式の評価方法の大きな転換点となります。
水野隆啓
浜松市/会計事務所/税理士/公認会計士/取引相場のない株式/残余利益方式
- Posted by 2026年09月28日 (月) |
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