2022年05月30日
節税と脱税は紙一重
行き過ぎた節税は脱税と認定される虞あり
先月、タワマン節税が脱税と認定された事案がありました。父親が借金をして購入したタワーマンションに関する相続税申告時の評価額をめぐり、納税者の主張が認められなかったケースです。相続税の申告においては、財産は時価で評価されます。不動産(土地、建物)については、財産評価基本通達において、土地は国税庁が定めた路線価をもとに評価し、建物については市町村が定めた固定資産税評価額をもとに評価した金額によります。しかし、この金額がすべてではありません。もともと「時価」が原則ですから、この財産評価基本通達によらない「時価」(不動産鑑定評価額)で評価した金額で相続税を計算すべきという事例もあり、今回はそれに該当するとされました。
今回の特徴は以下の通りです。
1.タワマンの購入額と評価額との間に大きな差異がある(評価額は購入額の約4分の1)。
2.購入時から相続発生時までの期間が短い(約3年)。
3.金融機関の借り入れ申請書類に「相続対策のため」と記載されていた。
4.このタワマン評価によって相続税額に特大な影響があった(数億円が0円に)。
節税と脱税の分岐点はよくわからないのが実情ですが、十分な注意が必要です。
さらに言うと、タワマン等の財産基本通達の評価額があまりに、実態を無視した金額になっていることが一番の問題だと思います。建設価額(再調達価額)をもととした評価額になっており、売買価格を構成している要素としての居住環境、眺望といったものが全く反映されていないため、評価額と売買時価との乖離が著しく、それに着目した節税も跡を絶たず、これを目的とした販売商品も多々見受けられるのが実情です。