つい先ほど新年を迎えたと思ったら、所得税の確定申告が始まった。時の流れは恐ろしいほど速い。
所得税の確定申告業務や相続税の申告業務を行いながら感じることがある。それは、企業の海外進出に伴って、現役世代の方が海外に居住していることが多いことである。円高の影響、日本の人件費を中心とするコストが高いこと、マーケットの大半が人口の多いアジア地域であること等により、企業の海外進出は目覚しい。大手製造業での設備投資も、日本国内は設備の更新投資のみであり、新規の設備投資はすべて海外で行われることも珍しくはない。
加えて優秀な技術者や研究者も日本を脱出して海外に渡る人が増えている。週刊SPAに掲載されていたが、がん治療薬の権威である(元)東大医科学研究所教授の中村祐輔氏もそのひとりで、現在はシカゴ大学医学部教授となっている。中村氏は平成23年11月に国の「医療イノベーション推進室」室長に就任し、製薬や医療機器をめぐる承認や開発の遅さを改善していこうとしたが、改革が一向に進まないことに嫌気がさしたと言っている。室長とは名ばかりで権限はなく、会議では各省庁の縄張り争いに巻き込まれ、改革は全くできなかったようだ。「ヘドロがたまったような官僚組織を相手に無力感だけが残り、年齢を考えて医療開発に前向きなアメリカに行くのがベストな選択だと思った。」と述懐している。
iPS細胞を作った京大の山中教授もかつてアメリカで研究者としての生活を送っていたが、現在は日本で研究開発に努力してくれている。官民一体となって、こういう人達を応援していく体制が必要であり、世界から優秀な研究者が日本に集まるような国にならなければ、いずれ日本は沈没していくことは疑いようがない。政治家、官僚に早く目を覚ましてもらいたいものである。