東芝の不適切な会計処理に関する第三者委員会の報告書が公表された。
今回の件は、昨年、公益通報制度による通報(メール)が証券取引等監視委員会にあったことに端を発する。これを受けて、証券取引等監視委員会は2月12日に検査を開始した。一方。会社はこの事実を4月3日に公表、社内委員会を設置して調査することとした。また、5月15日には、第三者委員会が発足し、本格的な調査が開始された。
この第三者委員会は、弁護士2名(うち、委員長1名)、公認会計士2名の計4名で構成されるが、あくまで、会社から報酬をもらい、調査報告書を作成する立場である。したがって、公表される報告書の内容もそのことを十分頭にいれて読む必要がある。
報告書は、7月20日に公表された。当初はインフラ関連工事の収益認識基準である工
事進行基準の会計処理の不適切だけと思われていたが、事業全般に及びその不適切な
会計処理(現段階では、故意による「粉飾決算」とは認定されていない。)による過大利益
の合計額は1562億円で、主な原因は以下の通りである。
・経営トップが追い込み、組織的な不正
・上司に逆らえない企業風土
・取締役会や監査委員会の監督が機能していなかった
・内部統制や監査法人の監査が機能していなかった
東芝という日本有数の企業でありながら、経営トップの極端なモラルの欠如が今回の原因であることは疑う余地がない。上司に逆らえない企業風土などは、どの会社でも大同小異であり、取締役会や監査委員会の監督が機能するか否かも企業の経営トップの姿勢次第である。
今回のこの件は経営トップの辞任、役員の大幅な見直し、組織風土の大幅な改善など、多くの課題が出た。今後、こうしたことへの会社の対処が注目の的となるのであろうが、株主からの会社や役員への訴訟、監査法人への責任追及、最悪の場合、経営トップの逮捕、上場廃止なども考えられ、まだまだあちこちに波及しそうである。経営トップの過ちは、あまりにも大きい。