平成29年4月より消費税率を8%から10%に引き上げるに際し、一部品目(食料品)の税率を低くする軽減税率を導入する案が出ている。諸外国でも導入しているケースはあるが、以下に示す数々の問題点がある。
① 富裕層に有利?
軽減税率の適用は低所得者対策だと言われているが、食料品に多額の金銭を費やすのは富裕層であり、軽減税率による減税額は富裕層の方が多額となる。ただし、所得に対する食料費の割合は低所得者ほど高いものと推測されるため、所得に対する消費税負担率は軽減税率適用により緩和されることとなる。
② 次々に軽減税率適用の要請が来る?
今のところ、軽減税率の適用は食料品に限定されているようだが、すでに新聞業界が「新聞」に対しても軽減税率の適用を訴えており、今後ますますこの要請が増加することが予想される。この結果、以前の物品税のように奢侈品に高い税率を適用することと同様になり、「広く、薄く」という消費税本来の趣旨から外れてくる可能性がある。
③ 消費税収が減る分、社会保障費が減る?
税金はもともと社会の運営のために必要なものであり、消費税に軽減税率を適用すれば、それによる減収分をどうするかという問題が新たに発生する。酒類を除く食料品を軽減税率の対象とすると、その軽減額は1兆3000億円という試算もあり、これを補うためには、たばこ増税などでは到底足りず、社会保障費の縮小も取り沙汰されているが、本末転倒ではないか・・。
④ 小売店は大混乱?
軽減税率の対象は、「酒類を除く食料品」という案があるが、中小小売店ではレジが対応できず、煩雑な事務作業が必要となるほか、「缶ビールと缶ジュースの詰め合わせ」のような贈答品は、8%と10%の商品が混在することとなり、正しい計算には著しい困難が付きまとうこととなる。さらにハンバーガーチェーン等では、客が商品を持ち帰れば食料品の販売で8%の税率、店内で飲食すれば飲食業として10%の税率となる(?)など、混乱の要因は内在している。