物価上昇目標2%を達成するため、日銀は金融機関から預かる預金に対してマイナス金利導入を決定した。デフレからの脱却を目指したアベノミクスにより民間金融市場に金をジャブジャブまいているが、物価目標達成は、おぼつかないまま年月が経過している。アベノミクスによって、円安、株高となったが、庶民にはあまり恩恵は及んでいない。
今の日本は、戦後の復興時と違い、国民が野心を失い、欲望もあまりなく、ただ平和を享受している状態である。よって、いくら異次元金融緩和をしても国民の反応は鈍いままである。また、企業等はコスト削減のため、こぞって非正規雇用者の採用を増やした結果、全体として家計に余裕がない状況が続いている。非正規雇用者の割合は全体の4割にも及び、一億総中流社会は完全に過去のものとなってしまった。正規雇用者は多くの場合、労働組合に守られ毎年昇給が行われ、賞与・退職金も恵まれているばかりか、福利厚生も大変充実している。それに引き換え、非正規雇用者は昇給にも恵まれず、退職金、福利厚生は貧弱なものとなっている。このことが国民全体の購買力を減退させている大きな原因であろう。
デフレからの脱却には、これらの非正規雇用者の待遇改善が必要ではないか。これには、正規雇用者の待遇を多少抑える必要が生じる。すべての従業員の待遇改善に応じられるほどの余裕がない企業が大半であろう。また、非正規雇用者の増加は企業に技術蓄積不足をもたらしかねず、この方面からも今一度思いをはせる必要性を感じざるを得ない。