経済大国と言われて久しい日本においても、貧困が国民生活に大きな影響を及ぼしており、大学等の学費、下宿費等の支払いのため奨学金を利用する人が増えている。この奨学金は給付されるものではなく、卒業後、返済しなければならない。高校卒業時には、経済感覚等が乏しいため、就職すれば、毎月の給与から返済することに大きな支障が生ずる可能性等にまで頭が回らず、安易に奨学金を利用する学生が多いようだ。最近のテレビでも、卒業後、希望通りの職に就いたが、毎月の給与から返済することは困難となり、破産手続きを選択すると放送されていた。「こんなことなら無理して大学に入学しなきゃよかった。」と嘆いている人も多いようだ。
借りた金は返済するのは当然のことではあるが、努力しても返済が不可能であれば、法的措置によって返済を免除してもらうのは当然の権利であり、一生これに苦しむより、新たに再出発することが重要であろう。ところが本人は破産することで身軽になれるが、借りたときに父母が保証人になっているため、その債務は父母に返済義務が移行することになる。父母に余力がない故、奨学金を借りて進学したため、父母も破産手続きをすることとなり、破産の連鎖があちこちで起こっているようだ。
日本は、教育費に対する公的助成は極端に少ない国であり、大学等の学費はあまりに高額である。政府も返済の必要のない給付型の奨学金を考えているようであり、今後はこうした悲劇が少なくなることを期待せざるを得ない。
それにしても、少子高齢化、人口減少の中、教育、福祉についての負担と受益の関係は、日本の今後における大きな問題であり、政府のかじ取りは大変であろうと推察される。消費税率の引き上げが延期されたが、景気に与える影響を考えれば当然とも思える。その反面、景気のことに配慮する限り、消費税率の引き上げは困難な状況が継続することが予想され、諸外国からも求められている財政の健全化は簡単ではない。