アベノミクスが行われてから3年以上が経っているが、国民生活には今一歩、目立った成果を見ることができない。大胆な金融緩和により為替レートは円安気味に推移し、輸出産業である大規模製造業は潤い、史上空前の利益を上げた企業も少なくない。しかしながら、これらの企業も稼いだ金を人口減少が続く国内では設備投資に回さず、市場が拡大している海外で設備投資せざるを得ない状況が続いている。よって、国内の景気回復のため政府が財政出動しても、民間部門への波及効果は乏しく、財政赤字を増やすだけの様相を呈しつつある。国内の景気を回復するためには、国民の消費を活性化しない限り困難である。しかしながら、個人金融資産は1700兆円とも言われ、その大半を持っている金持ち老人は、おぼつかない年金の元、将来不安が大きく、ひたすら金をためこんだままである。また、幼いころから倹約精神を植え付けられていること、まじめな仕事人間であったため消費することを知らない人間が多いことも影響しているようだ。
一方、若い人たちの中には、正規雇用につけず、派遣社員等の非正規雇用に甘んぜざるを得ない人が急増し、賃上げが厳しいため、将来不安、貧困にあえいでいる人の割合増えている。単純に派遣労働を禁止すれば、企業は自己防衛的に工場等を海外移転するだけで、逆に国内における雇用機会は減少することとなる。派遣労働を禁止するのであれば、それによる賃金上昇分を正規社員の賃金カットにより補てんする以外に雇用機会の確保は困難であろう。非正規労働者から正規労働者に移行することができれば、収入の増加、将来への安心感が高まり、少子化対策につながることは間違いないであろう。
人口減少化にある今の日本では、ありとあらゆる支出を減らす必要があり、コンパクトシティ化することにより道路、橋や公共施設(ハコモノ)の維持管理費を削減し、消費税を上げ、国民福祉に潤沢に金を回すことで国民の安心感の向上、将来不安の解消を図ることが必要となっている。
いずれにしても、日本再生には長くて遠いいばらの道が続いており、政府、国民が一体となって、この難局を乗り越えていく必要がある。