職業柄、弁護士等からの依頼により会社の継続が困難となった企業の決算書にふれることが多い。いつも感じるのは、こうした企業の決算書の大半が粉飾されていることである。本来計上すべき減価償却費を計上していない等も粉飾の一種だが、つもり重なる赤字を隠すためこれだけでは足りず、架空資産の計上が行われている例が多い。架空(過大)計上されている資産の種類ごとで言えば、一番多いのは商品や製品などの棚卸資産である。棚卸資産を過大に計上することによって、損益計算書の売上原価は過小計上となり、利益金額は過大となる。次に売掛金、架空売上を計上するため貸借対照表の売掛金を過大計上し、利益を過大計上することとなる。
しかしながら、損益計算書上、売上高等と比較してあまりに売掛金や棚卸資産の金額が膨れ上がりバランスが悪くなるため、金融機関等から指摘される恐れもある。浜松の製造業の会社は、これを隠すため、製品の架空金額を固定資産の土地に振替えていた。取得原価で計上されるべき固定資産(土地)を時価で計上しており明らかな粉飾決算書である。職業会計人がこれに関与して会計・税務業務を行っていたとしたらとんでもない詐欺行為に加担したことになる。
職業会計人の使命は、企業が「適正な決算書」を作ることを支援し、この適正な決算書により信用経済社会の発展に貢献すること、適正な納税の実現に寄与することにあることを改めて思い知らされた出来事であった。
2021年09月06日
粉飾決算
麻薬と同様、抜け出せなくなり、いずれ倒産へ