昨日(6月5日)、「日銀の大胆な金融緩和」、「財政出動」に続き、アベノミクス第3の矢である「成長戦略」を産業競争力会議で安倍首相が発表した途端に日経平均株価は前日比518円安と大幅な下落となった。成長戦略の中味が全体的に新鮮味に乏しく、投資家・投機家の失望感につながり大口の売りが加速したと見られている。
もともと、大胆な金融緩和によって円安になったが、今や日本はかつての輸出大国ではなく、今や貿易収支は毎年赤字となっている。製造業を中心として、かつては国内生産・輸出の増加が著しかったが、現在は地産地消で海外に売るものは生産も人件費の安い海外で作るばかりか、日本国内で売るものも海外生産のものが増加している。そこにもってきて、原発の停止による海外からの重油やガスの輸入が増加し、貿易収支は赤字が増加している。つまり、日本の国が貧乏になってきているということだ。円安の影響はガソリンの値上げ、ガスや電力の値上げ、輸入食料品の値上げを通して国民生活にじわじわとマイナスの影響を及ぼしつつある。とはいえ、円安により輸出企業やグローバル企業の連結決算には大きな効果があった。これらの企業を中心とする株価の上昇等により、国民感情は少し明るさが見え、消費も団塊の世代を中心に高級品が売れ出した。しかしながら、これが国民全体に与える影響はそれほど大きなものではない。製造業の生産が増え、新規雇用が生まれない限り、給料の上昇は見込めず、格差は広がるだけである。
日本経済の見通しが不透明な中、先進国を中心として世界の金余り状況は一向に変わらず、日本の株式市場・国債相場が投機家グループの金儲けのオモチャにされる可能性がある。金融緩和は本来、国債の利回り低下をもたらすはずだが実際には国債利回りは上昇(国債の価格は下落)し、株価も不穏な動きに終始している。注意が必要である。